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【かんとくの独り言(第3回)】

「コモンセンス」を高めることで個性が活かせる

皆さんは、ジャーナリストの田原総一朗さんを知っているだろうか。テレビの討論会の司会などをして、政治家にもズバリと切りこんでいく人だ。その田原さんが、ある雑誌の対談で、かつて日本の総理大臣を務めた宮沢喜一さんの教育に関する話を紹介していた。

“日本の教育は「正解のある問題」を解かせる教育をしている。正解を答えないと怒られる。ところが、欧米の教育では、特に大学では正解のない問題に取り組ませる。正解がない訳だから、生徒は自分の頭で考えて答える。”

確かに、日本と欧米の教育の特徴を言い表しているが、教育はどちらか一方だけということもないよね。両方がバランスよく必要なのではないかと思う。

サッカーをする上でも、「正解のある問題」に取り組むことと、自分で判断することや考えることの両方が必要になる。

サッカーの世界でいう「コモンセンス(常識)」とか「原則」と呼ばれるものは、「正解のある問題」と同じようなもの。
これは、世界共通のもの。南米でもヨーロッパでも、アフリカでも大事にされていること。さらに、年齢を問わず、12歳でも30歳でも重要であり、また10年前でも今でも大事なプレーをする上での原則をさす。

例えば、自分が中学生の時は、「ゾーン・ディフェンス」は一般的ではなく、「マンツーマン・ディフェンス」が主体だった。
「マークの3原則」や「クリアーの原則」だけでなく、「パス&ラン」「ボールに寄る」「ボールが来る前に考える」など個人戦術というものを徹底的に教え込まれた。今の時代、「ゾーン・ディフェンス」や「コレクティブ」と呼ばれる選手が連動して動く習慣を身に付けていなければ、上のレベルに行って行き詰ることになる。

「コモンセンス」や「原則」は、建物の土台のことだと思えばいい。その土台の上に、選手の個性が乗っかっている。選手は、この土台なしには自由に自分を表現できない。「コモンセンス」や「原則」というサッカーの共通項と、個人の自由なアイディアや選択がシンクロするのがサッカーというスポーツなんだ。

チェルシーのアザール、マンチェスター・シティのデブライネ、リバプールのサラーというワールドクラスの選手は、自分勝手にプレーしているだろうか。もちろん彼らは抜群のセンスを持っており、自由奔放にプレーしているように見える。ただ、それは土台の部分でしっかりとチームメイトに繋がっているからだ。それを見逃してはならないね。

個性を出したければ、しっかりした土台を、時間をかけて作り上げることが大事。「コモンセンス」の高い選手同士は、短い時間一緒に練習するだけでスムーズにプレーができる。なぜなら、お互いに共通項(コモンセンス)を持っていて、それがすぐに繋がるからだ。

シーズン中に、日本代表が国際試合をする場合、海外にいる選手たちは合宿に合流して2,3日で本番の公式戦を迎える。それでも一定のレベルの試合ができるのは、「コモンセンス」や「原則」がしっかり身についている証拠。

選手の皆さんにアドバイスがある。どうプレーするかの判断力、「コモンセンス」を磨きたいなら、いいサッカーを数多く見ることだ。
ヨーロッパチャンピオンズリーグ、イングランドプレミアリーグ、スペインのリーガ・エスパニョーラ、ドイツのブンデスリーガなど、世界のトップランクに注目して見ていれば、指導者に言われる前に自分で「コモンセンス」を向上させることができるよ。

ただし、試合のダイジェストだけを見て、サッカーを知ろうとすることはあまり薦めない。なぜなら、ダイジェストだけではサッカーの本質を理解することができないからだ。

選手や指導者は、試合の最初から最後まで見ることが大事だと思う。ピッチに入る前の選手がどういう表情で、どう振舞っているか。ヨーロッパの中継を見ていれば、そこから闘いが始まっているのが分かるだろう。試合の流れ、試合中の戦術の変化、選手交代の意味や効果、敵との駆け引き、監督の采配。ベンチに座っている選手が真剣に戦っている姿もしっかり見てほしい。こういうものは、ダイジェストを見ただけでは分からない。

【了】

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